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第167話 これが、恋ってやつか

Author: 雨音休
last update publish date: 2026-09-09 06:03:53

 その夜。

 ラグナシアの魔導具店にニキはいた。

 直方体のこぢんまりとした建物だった。レンガ敷きの床は日焼けしたような小麦色である。外は冷え込んでおり、室内の暖炉では薪が赤々と燃えていた。木製の棚の上には厚手の白い布が敷かれており、その上に様々な魔導具が並べられていた。フロアスタンドが三つ置いてあり、店内をほのかに照らしていた。ニキの他にもカップルのプレイヤーが一組いて、「これいいんじゃない?」と声をかけ合いながら品物を物色している。二人とも、オシャレなマフラーを巻いていた。

 ニキの格好もチェンジしている。砂漠の夜は、裸にチョッキではさすがに寒い。トウマたちが宿屋に行くのを見届けた後、みんなで防寒具を作ったのだった。ラグナシアの近辺に生息する服の素材モンスターを狩り、服屋で作成した。いま黒のダウンジャケットを着ている。

 魔導具店に来ている理由は他でもない。プレゼントを買うためである。

 ニキは難しい顔をしてつぶやいた。

「アイには、何をあげたら喜ぶさ……?」

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     その夜。 ラグナシアの魔導具店にニキはいた。 直方体のこぢんまりとした建物だった。レンガ敷きの床は日焼けしたような小麦色である。外は冷え込んでおり、室内の暖炉では薪が赤々と燃えていた。木製の棚の上には厚手の白い布が敷かれており、その上に様々な魔導具が並べられていた。フロアスタンドが三つ置いてあり、店内をほのかに照らしていた。ニキの他にもカップルのプレイヤーが一組いて、「これいいんじゃない?」と声をかけ合いながら品物を物色している。二人とも、オシャレなマフラーを巻いていた。 ニキの格好もチェンジしている。砂漠の夜は、裸にチョッキではさすがに寒い。トウマたちが宿屋に行くのを見届けた後、みんなで防寒具を作ったのだった。ラグナシアの近辺に生息する服の素材モンスターを狩り、服屋で作成した。いま黒のダウンジャケットを着ている。 魔導具店に来ている理由は他でもない。プレゼントを買うためである。 ニキは難しい顔をしてつぶやいた。「アイには、何をあげたら喜ぶさ……?」 プレゼントの相手は晴恋ではなかった。アイギスである。 出会った当初から関係があまり上手くいっていない。 ニキは気にしていた。 恋人の使い魔ともっと仲良くしたかった。(そんなことをする必要は無いさ?) そうとも思う。 だが彼は不器用な性格である。 アイギスとも一緒に笑い合いたかった。 そんな訳でプレゼントをする魔導具を選んでいる。ヴァルはたくさんあった。けれど、高価過ぎるものをプレゼントしても相手が気負ってしまう。 ふと厚手の布の上に、鳥の模様が施された緑色のブレスレットが置いてあった。ウイングブレスレットである。ニキが手首につけているものと同じものだ。お値段は二万ヴァル。 そうだ。(これにするさ!) お揃いでつければ、仲良くなれると思った。 だけど果たして、アイギスは自分とお揃いのブレスレットをつけてくれるだろうか? 未知数である。 ニキ

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     最初はトワのターンだった。 デートの制限時間は一時間。 ラグナシアのスナネコレストランに来ていた。 店の前にはスナネコの顔が描かれた看板が立っている。ラクダの銅像もある。建物はオープンエアになっており、砂地の上にテーブルと椅子が並べられていた。何とも開放感のある店である。四つの角には柱が立っており、黒い布が張られ、屋根となっていた。日差し対策だった。カラッとしたそよ風が吹いており、トウマの青い前髪がふわりと揺れる。 プレイヤーの客が多く、料理を楽しみながら同伴者との会話に花を咲かせている。人々のほとんどがトワと同じエバグルを着ていた。着ていない者には暑さデバフがかかっている。HPが少しずつ削れている。 余談だが、遺跡から帰還した後で、トウマたちはすぐに服屋に寄った。その時にトワはエバグルを作成している。 いま、トウマとトワはテーブルに対面で腰かけていた。パニロという名前の料理を食べている。ラクダの肉と野菜の煮込み料理であり、独特のスパイスが効いていた。甘辛い味わいがする。ラクダの肉は牛肉と同じような味であり、ちょっと硬かった。 トウマはパンを千切って煮込みの汁につけて食べる。甘辛くて柔らかい。 トワは落ち着かない様子だった。震える手でフォークを持ち、肉を口へ運ぶ。 トワが話しかけた。「お、王子様」「ああ、どうかしたか?」「ご趣味は?」「趣味か」 ここはお見合い会場かどこかだろうか?:初々しい会話w:私はトワさん推しです!:BL真っ盛りだなw トウマは気にしたふうもなく答える。「釣りが趣味だな」「釣りか。川釣りか? それとも海釣りか?」「どっちも好きだな」「ふーん、今度俺も連れていけよ」「機会があったらな」 店の隅っこには仲間たちがいて、二つのテーブル席を陣取っている。トウマとトワのデート風景を興味津々と眺めていた。 キャルル丸が皿に置かれた肉の塊をバクバクと頬張って

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第4話 ヴァルの村

     ゴーレムを倒し終えると、ノーファンの村へと二人は転移した。 辺りには木造りの民家が立ち並んでいる。遠くを見ると森や山があった。地面は土。その道路で、トウマとウミは隣り合って佇んでいた。 「普通の村だな」「そのようですね」「とりあえず、狩り場に行くついでに、村を見て回ってみるか」「はぁい!」  二人で並んで歩き出す。 すぐに他プレイヤーの姿があった。 横切っていく通行人。その顔色は明らかに沈んでいた。他にも座り込んでいる女性がいた。壁にもたれかかっている男。空を見上げている魔法使いふう。誰もが死んだ魚のような目をしている。 異変に気づいたウミが声をひそめてつぶやく。不安に揺れ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第3話 排除

    ロッジのような一室。木造りの天井と丸太で出来た壁。そこのベッドにユウマは腰掛けていた。 ここがゲームの中らしい。 顔の前にはステータス画面のような半透明の青いボードが浮かんでいる。 システム音声が響いた。 「プレイヤー様。VALORIUMオンラインの世界へようこそ!」 「あ、はい」 「まず、プレイヤー名を決めてください」 「トウマで頼む」 彼の本名は冬野悠馬である。 「トウマ、その名前は使用できます」 「良かった」 「次にゲーム内職業を選んでください」 画面には様々な種類のジョブが並んだ。 そして右上には特別コード入力の文字。そこをタップして、暗記し

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第2話 ログネスト

     ログネストの玄関は広い空間になっている。背の高い天井。タイル敷きの綺麗な床。 しかし、空気は息苦しいほど重かった。 今も、通路からドリンクを汲みに来た利用客がある。ちらりと振り返ると、寝ていないような疲れた顔をしていた。 ふと隣には男性店員に連れられた太り気味の客がやってきた。太り気味の客は男性店員に頭を下げて大声を出す。 「待ってください! あと五時間、五時間プレイできれば、ヴァルを払えそうなんです!」「お客様、すでに退室の時間でございます」 (……ヴァル?) 背中に鳥肌が立つのを感じながらユウマはカウンターに向き直る。 茶色い受付台を挟んで、ユウマの前には女性店員が立って

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第1話 詰み

     それは、どこにでもある小さな“シアワセ”だった。 朝。寝息を立てているユウマの肩に、妻が優しく手を置く。 「ユウマ、起きて起きて」「むにゃむにゃ、もっと寝てたい」「駄目。会社に行く時間よ」「ぐぐー、ん、朝?」  瞳を開く。目の前には妻の優しい笑顔があった。ユウマはダブルベッドから上半身を起こし、右手を口元に掲げて大あくびをする。 「ふわあ」「あら、大きなあくびですこと」「朝食は?」「出来ています。着替えて、ダイニングへ来てくださいな」「ああ、分かった」  クスッと笑って妻が部屋を出て行く。スリッパの足音が遠ざかって行った。 ユウマはベッドから出て支度をする。ワイシャ

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